読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

大学への生物

大学入試に向けた高校生物の解説をしています.徐々にコンテンツを増やしていきます.現在は2017年度大阪大学の解説を作成中.解説してほしい問題などのリクエストがありましたらコメント欄まで.

2015年度 大阪大学 前期 生物 1B 【解説】

大阪大学(2015-前期) 解説

f:id:road-to-the-victory:20170207213627p:plain

f:id:road-to-the-victory:20170207213635p:plain

---------------------------------------------------------------

【解説】難易度:★★★☆☆

実験考察問題としてはそこまで難問というわけではありません.

ですが200字の記述がやはりキツイです.

頭では理解できますが言葉にして理由を説明するのが難しい気がします.

(4)と(5)の記号が合えば及第点.理由が完璧に書けるなら上等です.

 

(4)

問題を整理していきます.

・網膜が受容する光量が増大⇒瞳孔縮小⇒眼に入る光が減少

・網膜が受容する光量が減少⇒瞳孔拡大⇒眼に入る光が増大

この反応は「瞳孔反射」と呼ばれます.

そして野生型の網膜について,光強度に対する瞳孔の大きさをグラフに示すと,

aのようになるとのことです.

リード文通り,光の強度を大きくすると,瞳孔直径が減少しています.

 

さてここからが重要なところです.

視細胞が網膜にしか存在しない場合,視細胞を欠いた変異型マウスでは

瞳孔反射は起こらないはずなのに,瞳孔反射が起こるというのです.

そしてその曲線はbで表され,

網膜の中に視細胞とは別の光受容細胞(=細胞X)が存在し,

瞳孔反射を引き起こすと書かれています.

 

つまり,

・野生型マウスの網膜=視細胞+細胞X⇒曲線a

・変異型マウスの網膜=細胞X⇒曲線b

ということになります.

これで(オ)a    (カ)b とわかります.

 

続いて,問題文

「このことから,図2の曲線aにおいて,強度が100以下の弱い光で生じる

瞳孔反射は(キ)が光を受容することによって引き起こされ・・・」

とあります.

 

強度が100以下となる部分に注目しましょう.

曲線aを見ると100以下では光強度が上昇するにつれ,

瞳孔の直径は小さくなっていますが,まぁ当たり前といった感じです.

 

注目すべきは曲線aではありません.曲線b(細胞Xのみ)の方です.

光強度が上昇しても,光強度が100以下では,瞳孔の直径は変わっていません.

つまり,曲線aにおいて光強度100以下における,

光強度上昇に対する瞳孔の直径の減少は,

細胞Xによってではなく,視細胞によって起こることがわかります.

光強度が100以上になると,曲線bも光強度の上昇とともに

瞳孔の直径が小さくなるので,細胞Xが瞳孔反射に寄与していることがわかります.

 

ということで(キ)視細胞 (ク)細胞Xとなります.

 

(5)

問題を整理していきましょう.

細胞Xを持たず,視細胞を持つ変異マウスを作成して,

この変異マウスでの瞳孔反射はどの曲線で表されるかという問題です.

 

さきほどの(4)の考察がヒントになってきます.

「細胞Xは,光強度100以下では瞳孔反射には寄与しない」というのが

先ほどの問題のハイライトでした.

つまり,光強度100以下で起こる瞳孔反射(曲線a)は,視細胞に寄るものです.

では「視細胞を持ち,細胞Xを持たない変異マウス」の曲線はどうなるかというと,

光強度100以下では、曲線aと重なるはずですよね.

野生型マウスでも光強度が100以下であれば,細胞Xが働かないため,

視細胞しか持ってないのと同じなわけですから.

ということで答えはeです.

 

さて,面倒くさいのが,その理由を200字で述べないといけません.

文字数的には強度が100以上の時ことについても言及しなければいけないのでしょう.

 

ポイントを書いておきます.

・光強度が100以下

 ⇒瞳孔反射への細胞Xの寄与は無く,視細胞が光を受容することで反射が起こる.

 ⇒題意の変異型マウスによる曲線は曲線aに重なる.

・光強度が100以上

 ⇒細胞X,視細胞の両方が光を受容することで瞳孔反射が起こる.

 ⇒視細胞のみが瞳孔反射に寄与する題意の変異マウスの曲線は野生型より上に存在.

 

【解答例】

強度が100以下の光が照射されている時は,一般的に瞳孔反射への細胞Xの寄与は無く,視細胞が光を受容することで反射が起こるため,題意の変異型マウスによる曲線は曲線aに重なる.強度が100以上の光が照射されている時は,一般的に細胞Xと視細胞の両方が光を受容することで瞳孔反射が起こるため,視細胞のみが瞳孔反射に寄与する題意の変異型マウスの曲線は野生型より上方に存在するから.(182字)

 

この問題,間違えるとしたらcを選んでしまう人がいそうです.

なんとなく「視細胞+細胞X⇒曲線a,細胞X⇒b」なんだから

視細胞だけなら曲線cなんじゃないかと思ってしまう人がいたのではないでしょうか.

 

一応この問題のネタの部分を話しておくと,

問題の「細胞X」は,「メラノプシン発現網膜神経節細胞」のことだと思われます.

メラノプシンは視物質の一つでタンパク質です.

そのメラノプシンが発現している細胞が網膜には存在します.

それが「メラノプシン発現網膜神経節細胞」です.

網膜色素変性によって視細胞が消失したり,錐体・かん体ノックアウトマウスでも

対光反射が見られたことからこの物質が発見されたそうです.

(神経節細胞は網膜に存在する細胞ですが,網膜色素変性では機能を失いません)

ちなみにこの物質が発見されたのは2000年前後だということで,

現在でもメラノプシンに関わる研究は行われているそうです.