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大学への生物

大学入試に向けた高校生物の解説をしています.徐々にコンテンツを増やしていきます.現在は2017年度大阪大学の解説を作成中.解説してほしい問題などのリクエストがありましたらコメント欄まで.

2015年度 大阪大学 前期 生物 4A 【解説】

大阪大学(2015-前期) 解説

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【解説】難易度:★★★☆☆

(2)(3)が難しい方だと思います.この2つをちゃんと正解できる人は少ないはず.

(3)は問題文自体があいまいなため,解答は複数あると考えられます.

(実際,河合塾さんと東進さんが出している解答例は違いました)

あと(4)の250字の記述がきついところですが,知識で処理できる記述なので高得点は狙いたいところ.

 

(1)

教科書レベルの穴埋め問題です.解説は省略.

(ア)恒常性(ホメオスタシス) (イ)自律神経 (ウ)内分泌 (エ)腎単位(ネフロン)

 

(2)

汗には,水と少量のNa⁺が含まれています.

なので,発汗によって水は大量に失われ,Na⁺は少量失われます.

なので発汗が起こるとまず,細胞外液の浸透圧が上がります.

(細胞外の濃度が上昇するため.)

細胞外液の浸透圧が上がると,相対的に細胞内液の浸透圧は低張になるので,

水の移動が細胞内から細胞外へ起こり,浸透圧は同じになります.

このときの浸透圧は正常状態より少し高くなるはずです.

よって正解はbです.

 

(3)

水道水を3L飲むわけですから,とりあえず体内の水分量は40Lまで回復します.

そして浸透圧ですが,3Lの水を飲むとまず細胞外液の濃度が下がるため,

浸透圧は細胞外液だけ落ちるはずです.

発汗によって細胞外液からはNa⁺が失われているので,

細胞外液に水を3L足せば,給水後の浸透圧は,正常状態の浸透圧より

低くなります.

もちろん,時間がたてば調節機構が働いて正常の浸透圧に戻るため,

最終的には図1の状態に戻るわけですが,

問題文には「図1からどのように変化するか」と書いてあるので,

給水直後の概念図を解答とするのでしょう.

ちなみに,給水後時間が少し経つと,細胞外液から細胞内液へ水が移動し,

細胞外液と細胞内液の浸透圧が同じになる瞬間がきます.

(通常の浸透圧よりは低い浸透圧レベルで)

その時点での様子を書いても○をもらえると考えられます.

ちなみにその解答を出しているのが東進さんです.

正解の図は河合塾さんのホームページから引用させてもらいました.

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(4)

それぞれのホルモンの働きについて整理します.

■抗利尿ホルモン(バソプレシン

 ・脳下垂体後葉から分泌

 ・集合管での水の再吸収を促進

 ・血圧上昇

■鉱質コルチコイド(アルドステロン)

 ・副腎皮質から分泌

 ・尿細管,集合管でのNa⁺の再吸収促進

 ・尿細管,集合管でのK⁺の分泌促進  

 ・血圧上昇

です.

バソプレシンで血圧が上昇する理由は,

集合管での水の再吸収を促進

  ↓

血流量の増加

  ↓

血圧上昇

という流れです.

ちなみにバソプレシンは血管に働きかけて,収縮させ血圧を上昇させることもできます.

 

アルドステロンで血圧が上昇する理由ですが,

尿細管,集合管でのNa⁺の再吸収促進

  ↓

尿細管,集合管周囲の浸透圧上昇

  ↓

尿細管,集合管での水の再吸収促進(浸透圧差による)

  ↓

血流量増加

  ↓

血圧上昇

という流れです.

 

血流量や血管抵抗が増加するとなぜ血圧が上昇するかがわからない人は,

オームの法則を思い出してください.

「電圧・電流・抵抗」を「血圧・血流量・血管抵抗」に当てはめることができます.

「電圧=電流×抵抗」ですから「血圧=血流量×血管抵抗」となります.

つまり血流量や血管抵抗が上昇すれば血圧も上昇します.

 

ここまでの内容を250字以内にまとめれば,解答になります.

 

【解答例】

脱水状態に陥ると,体液量が減少するため浸透圧が上昇し,血圧は低下する.間脳の視床下部はこれを感知し,脳下垂体後葉からのバソプレシン分泌を促進する.バソプレシンは腎臓の集合管に作用して水の再吸収を促進し,体液量を増加させることで,浸透圧を下げ,血圧を上げる.また,副腎皮質からは鉱質コルチコイドの分泌が亢進し,腎臓の尿細管・集合管に作用してNa⁺の再吸収を促進する.その結果集合管内外の浸透圧較差を大きくなり,水の再吸収が促進されて体液量が増加するので,浸透圧が下がり,血圧が上がる.(242字)

 

(5) 

健常者では,グルコースはすべて尿細管で再吸収されて,尿中に出てくることはありません.

尿中に糖が出てくるといわれれば,糖尿病を考えます.

これで正解ですが,細かいことを言うならば,

尿中に糖が出てきたからといって糖尿病とは限りません.

実は尿中に糖が出てくる病気は糖尿病以外にもあります.

糖尿病は血漿中のグルコース濃度高値によって診断されるため

正確には,尿にグルコースが出ていなくても糖尿病である可能性はあります.

(そんなの知らないとは思いますが・・・)

血漿中のグルコース濃度が高いことに言及していれば完璧でしょうが難しいですよね.

 

血漿中のグルコース濃度の正常値は100mg/dLです.(これは覚えておいてもいいかも)

なので問題の単位に合わせるならば,1.0mg/mLですね.

血漿グルコース濃度が正常値の4倍ですから,もちろん異常です.

 

なので満点の解答としては,

【理由】血漿中のグルコース濃度が高く,尿中にグルコースが排出されているから.

 

ですが実際,どこまでが満点回答なのかは出題者に聞かなければわかりません.

本当のことを言えば尿中のグルコースの有無は糖尿病の診断に関係ないので,

「尿中にグルコースが排出されているから」だけでは×なのでしょうが,

あくまでも医者になるわけでもないし,高校生物の試験なので,

「尿中にグルコースが排出されているから」でも○をくれるかもしれません.

 

(6)

問題文を読むと10分間で腎うに出てきた尿を計測しているそうです.

イヌリンは再吸収・分泌が起こらないので,血漿中と尿中のイヌリンの濃縮率が

そのまま尿の濃縮率になります.

24.0/0.2=120倍ですから,10分間で作られた原尿は,120×10=1200mLですね.

糸球体濾過量(mL/分)を聞かれているので,1200/10=120(mL/分)です.

 

 

おまけの話.

グルコースが尿に排出されるのは血漿中のグルコース濃度が200mg/dL以上になったときです.

(つまり正常値の2倍の濃度になったら尿中に出てくる.)

「糖尿病患者の尿をなめると甘い」という話を聞いたことがある人もいるかと思います.

実際になめた人がいたら感想を聞きたいところですが,尿から甘い匂いはするそうです.